Capriccioso Assaiの別館。
内容は無いようです。

2013年11月7日木曜日

Xperia Zの液晶パネル性能測定の裏話

4 件のコメント

本館において掲載した「レビュー - Xperia Zの液晶パネル性能測定」裏話的な記事です。
かなり私情丸出しで書きますので、ノークレームでお願いします。

はじめに

Xperia Z(SO-02E)をお借りして、液晶パネルの性能測定を行ないました。

自分が使用しているHTC J butterflyが(依怙贔屓とかではなく)トップクラスの表示性能を持っていることもあり、当然ながら比べてしまう訳ですが、本館記事ではできる限り測定データによる客観的評価をしています。
ここでは、言いたいこと書きたいことを書きます。

測定までの紆余曲折

お借りした経緯とかは割愛して、測定に入る前のお話。

測定するにはWi-Fiの接続が肝だったこともあり、我が家の無線LAN(NECのWR9500N)にきちんと接続されるかが、この時の心配事だったけど問題なく接続。5GHz帯が使えないのも懸案だったけど、2.4GHz帯でも問題なかったので第一関門は突破。

第2関門は、PCとの画面を連動させるための接続がうまくできるか。
接続ラグも懸案だったけど、特に気にする必要も無く、問題なし。

テスト測定を行い、きちんと測定されるかを確認する。が、問題発生。
画面の輝度設定を最大にしているはずなのに輝度が出ない。なんと300cd/m2切り(この時の測定データ保存しとけばよかった)。

明らかにおかしい。

輝度低下の原因のひとつに経年劣化があるけど、それはまずありえない。
Xperia Zの発売日は2013年2月9日。この発売日から24時間画面をつ点灯し続けて使用しても8ヶ月程度(約5700時間程度)。
バックライトの寿命は最大輝度を1万時間近く使用しても輝度が半分程度になる設計が行なわれているはず。

ネット上で同様の現象があるか軽く検索するが、特に見当たらず。

再度白輝度を測定するために電源を入れ測定すると380cd/m2を測定。

”導入したアプリで問題が発生しているのかも“という推測を立て、全アプリをアンインストールすることに。
しかし、輝度が安定しないのは変わらないため、ハードウェア起因であると結論付ける。

ここで“本体が熱を持つと画面輝度が下がる”と仮説を立て検証することに。
画面輝度を最大、省エネOFF、スリープOFF、Wi-Fi接続という条件で白輝度をリアルタイムで測定すると、見る見るうちに輝度が低下することを確認。そして本体から熱が取れるように放置してから再度白輝度を測定すると400cd/m2を計測。
これで、“本体が熱を持つと画面輝度が下がる”という仮説を立証。

この結果を元に測定する際はできるだけ本体が熱を持たないようにして測定しました。
ですが、「i1 Profiler」による測定に7-8分掛かるため、どうしても熱の影響を受けます。なのでi1 Profilerで得られる輝度、白色点、コントラスト比というデータには信頼性が置けないということになります。

測定パッチ数を減らせば2-3分で測定することも可能ですが、測定結果の精度に影響が出るため、最大パッチ数で測定しました。ただ、精度を上げるためのパッチ数増加が、測定精度を下げるという結果になっており、どうしようもない状態です。

このため、輝度、白色点は、別の方法で精度の高い測定が可能のため、こちらで測定することに。コントラスト比は、別計測ソフトのHCFRを用いて測定しました。
これで、できる限り精度の高い測定を行ないました。

表示品質(本館記事

お世辞にも良いとは言えませんね。
展示機で何度も見たことはありましたが、落ち着いた環境でじっくり見ると「本当にフラッグシップか?」という疑問すら出てきます。

コントラスト比は低いため全体的に画面が白っぽい、色温度は高い…。
モバイルブラビアエンジン2を有効にすれば、色は濃くなるけど表示的には良いとは言えない。色濃くしたら綺麗に見えるだろうという考えなんだろうけど、表示の破綻すら起きている有様。

HTC J butterflyと比べると粗が目立ちます。HTC J butterflyは、液晶パネルのポテンシャルは素晴らしいものがありますが、内部色設定はあまり良いとはいえません。これにすら劣る訳ですからね。

輝度(本館記事

先に説明した通り、本体温度で輝度が変動します。
できる限り熱が無い状態で測定しました。

最高は401cd/m2、最低は19cd/m2かなり広いです。
コントラスト比が低下せずに輝度(バックライト)の設定だけでこれだけ低下させることができるのですからね。

ただ、輝度値の設定が極端過ぎる気がします。
当初は100%、75%、50%、25%、0%という25%刻みで測定しようと思っていたのですが、100%から75%であまりに極端に輝度が低下して、50%では49cd/m2と信じられない数値でした。

このため、1%刻みで測定しました。高い%では1%の設定輝度が大きいのが原因ようです。
低い%では、3%数値が同じというのすらあり、最後の方は19cd/m2を維持しています。

コントラスト比(本館記事

「本当にVAか?」という疑問が出るほど、コントラスト比が低い。
黒表示したときの光漏れがひどい。“視野角を取った際”の光漏れならまだ分かりますが、正面から見ても光漏れが顕著です。見た感じでコントラスト比が低いことが分かる。

海外モデルの測定データを見ていたので、1000はあるだろうと淡い期待を持っていましたが…まさか700台だとは思わなかった。
それに、モバイルブラビアエンジンを有効するとさらに下がるという。下がっている理由は、白輝度が下がるにもかかわらず、黒輝度が変わらないため。当然ながらコントラスト比は下がるわけで。

3DS LLの液晶パネルの方がコントラスト比は高いぐらい。1,000ぐらいありますからね。3DS LLも一応VA(ASV)だし。
HTC J butterflyも1,000:1ある。IPSに劣るVA…

色温度(本館記事

色温度って?という人はこちら

高い。なに8000Kって。
白が真っ青に見える。Xperia Zを見た後にHTC J butterfly見ると黄色く見える。
6500Kが黄色いとか言う人は、普段から8000Kとか9300Kとかのを見てるんだろうなぁ…

色温度が高いので、輝度が高いと白が痛い。青味が強すぎ。
ホワイトバランスを設定すると見る事ができますが、無かったら個人的には拷問に近い。
といっても、この機能は後のアップデートで追加されたものだから、場合によっては無かった可能性すらある。

黒体軌跡(本館記事

黒体軌跡って?という人はこちら

偏差は0.002と優秀。特に書くこと無い。

グレースケール(本館記事

測定前に表示動向を探るために操作していると、8000Kという色温度をあまり感じませんでした。
白表示をすると真っ青なのは分かるけど、色んな階調の表示を含めてみると、そこまで高い色温度を感じない。

このことから、測定前からある予想をしていた。グレースケールでの色温度が高いということを。
できる限り特定階調における色付きが無いようにするため、白色点での色温度と同じであることが望ましいのですけど、まあ予想通りという結果に。

低域での10000K越えは、たまたま測定した数値です。
どういうことかというと、この低域は数値があまり安定しません。ですので、普通は数百Kぐらい差が出ます。が、今回測定したXperia Zは1000K近く上下します。ですので、たまたま測定した数値がこの10894Kという数値です。

それでも9000Kを割ることはなかったので、高いことには変わりない。
全体的に高いので、白色点が相対的に低く感じるため、色温度がそこまで高いと感じない。ただ、明るい画像ばかりだと、色温度が高いと感じます。

モバイルブラビアエンジン2を有効にすると、20%グレーで色温度が10,000Kを超えます。
無効時と同じく、低域で高い色温度を計測します。

ガンマ値(本館記事

モバイルブラビアエンジン2無効時は2.14-2.17。
有効時は2.60-2.62です。

数値に差が出ているのは、グレースケールで説明した数値の上下による誤差が発生しているためです。
このガンマ値が大きい程、色が強く感じます。正確には中間調が暗くなるんですけどね。

通常、PCなどのモニターはガンマ値2.2(Windowsの設定というのもありますが)が設定されます。この場合は理想階調は8ビットです。
モバイルブラビアエンジン2は、ソニーのブラビアエンジンを根幹としているため2.6という数値になっていると思われます。
この2.6というガンマ値はデジタルシネマで使われる数値です。ですので、「高画質にするにはガンマ値2.6だ」ということで設定されているのか知りませんが、有効時は2.6です。

この説明ならガンマ値が2.6というのも納得ですが、デジタルシネマの前提に12ビットがあります。2の12乗は4,096、RGB3色あるので、4,096×4,096×4,096=68,719,476,736色(約687億色)です。
これだけの膨大の色数を扱えるならガンマ値2.6でも問題ないのでしょうけど、Xperia Zは8ビットですので約1677万色(2の8乗。256×256×256=16,777,216色)のです。色数が足りないとトーンジャンプなどが発生します。グラデーション数が少なくなるわけですからね。

当然ながらモバイルブラビアエンジンという名ですから、この辺を加味して色設定を行なっているはずですが、有効時に画質破綻があるので、煮詰めが足りなかったという感じでしょうね。

今後液晶パネルの高精細化が止まると色域戦争になるだろうなぁーと思っていますが、この階調表現を上げることを考えるべきだと勝手に思ってます。ただ、差がほとんど無いですから、セールスポイントにならなさそうですけど。

補足的な説明ですが、Windows、ITU709、sRGBではガンマ値は2.2です。そしてデジタルシネマの配給用マスターソース(DCDM)は、ガンマ値2.6とされています。

色域(本館記事

今回の測定での最大の“謎”である色域制限があります。

モバイルブラビアエンジン2が無効時の方が色域が広いです。

sRGBカバー率:約99.7% / 約99.6%
sRGB比:約120.1% / 約119.9%

微々たる差ですけど。(無効時/有効時)
それでも駆動制限が設けられているのには違いありません。なぜなのかが本当に疑問です。推測すらできないですから。

色域自体はsRGBを100%カバーしませんが、ほぼカバーです。
ただ、比では120%とかなりオーバーです。

当然ながら、AdobeRGBやNTSCをカバーするためなら、sRGB比が大きくオーバーするのは当たり前ですが、そうではありません。
AdobeRGBは約85%、NTSCは約80%と中途半端なカバー率です。

微妙な色域設定をする必要性はなんでしょうかね。
モバイルブラビアエンジン2があるといっても、これが適用される範囲は限定的のため、中途半端は色域はあまりよく無いと思います。

視野角(本館記事

広くは無い。ちょっと角度を付けると色が抜ける。
MVAとは思えないレベル。こう見ると、MPGC法の視野角補償はかなり有効であることが良く分かる。
ここまでひどいとは思わなかった。モバイル向け液晶パネルはやっぱりIPS方式ですね。

モバイル機器は基本正面から見るから、液晶パネルに視野角はいらないという人もいます。まあ、好みの問題ですからね。
ただ、私は視野角は必要派です。

「モバイル機器は基本正面から見る」というのが、そもそも間違いです。
視野角0度でモバイル機器を見ている人はまずいないと思います。数度の角度を付けて見ています。

例えば、自分の目の前で、これが正面というところでスマホを持つと分かります。角度が付いてるはずです。
付いていないという人は、頭の真ん中に目が有る人です。

人間の目は離れて2つあります(片眼どうこうは別)。基本的にこの2つ目を使用して認識するため、必然的に自分の正面に対象物を持ってきます。その方が見やすいためです(視野がずれていると、ぼやけて見えたり、2重見えたりするのも理由です)。

ですので、完全に正面にスマホなどの機器を、自分に対して完璧に平行に持った場合、12度程度の視野角が付きます。
完璧に平行にすることは基本無理ですので、視野角は最低でも20度は必要です。できれば30度はあった方が良いは個人的に思います。

20度範囲内(左右合計角度のため、片方だけだと10度)では、色変化、輝度変化が小さいことが重要です。
この低角度で、色変化、輝度変化があることは、通常使用においても視野角の変化を常に感じることであり、画質劣化です。

伊達や酔狂でこんなことを言っている訳ではなくて、ちゃんとソースありです。日経マイクロデバイスの2008年5月に掲載されています。

さて、Xperia Zの視野角はどうなのか。
本館の記事の画像はかなり浅い角度から撮影したのですが、色は抜けます。ちょっと角度を付けると抜けるので、個人的な30度はもちろん上記の20度ですら満たしていないでしょう。

タッチパネル(本館記事

Xperia Zはカバーガラス一体型タッチパネルです。光を当てると結構配線が見えます。
タッチパネルが別に乗っているものでも配線を見る事はできますが、ここまではっきりとは見えません。

見ていて気になったのが、本館で触れている反射です。
部分部分で反射するため、拡大鏡で除いてみると、盛大に反射していました。

おそらくジャンパ線の反射だと思われます。
X軸、Y軸の配線がされているため、どうしても交わる部分が出てくるので、ジャンパ線で繋ぐのですが、おそらく金属(銀とか銀化合物など)で作られているのでしょう。

光を当てると見える電極は透明導電材(おそらくITO)で形成されています。ジャンパ線もITOなどで作れるのですが、金属を選択したようです。価格の問題(ITOのI<インジウム>が高価なんです)が製造の問題かは不明ですが。
金属を使うとこのように反射するため、視認されないようにかなり細い配線をする必要があります。実際かなり細いのですけど、拡大鏡で拡大せずとも光を当てれば反射するので、明るい環境で画面の視認性を阻害する可能性があります。

追記;2013/11/08

コメントにて「ブリッジのITOとレジスト(絶縁層)の反射では」との指摘を受けました。
反射光が重なり増幅されたため、反射している可能性もあります。

バックライトが付いていれば気になることはまずないと思いますが。

ホワイトバランス(本館記事

ホワイトバランス機能で所定色温度に調整するには、という項目ですので、液晶パネルの性能とは関係ないですね。
パネルに個体差があるので、全てのXperia Zでこのような設定をすれば、所定色温度になるということはありません。

海外モデルは6500Kに設定されていますし、色温度の設定は国によって変えているのか、パネル起因なのかが分かりませんし。

無い項目

HTC J butterflyの検証記事にはあって、Xperia Zの記事には無い部分があります。
画素写真と光漏れ確認です。

画素写真はHTC J butterflyではRGB別に画像がありますが、今回はありません。
というのも、撮影し忘れた訳ではなく、撮影しても意味が無いからです。
精細度443ppiですのでドットはかなりの小ささです。拡大鏡で拡大するとある程度見えるのですが、これを撮影するとボケます。

Xperia Zのは、ドットは2分割されているため、本当に点が写るだけで、画素の形状を見ることはできません。
検証記事とは別のXperia Zの記事が本館にありますが、そこで画素構造の簡略図を載せていますが、こんな感じでした。

光漏れは、コントラスト比からある程度推察できるから、載せてません。
HTC J butterflyの検証記事で乗せたのは、IPS方式であることを確認するためと、コントラスト比が高かったためです。

どうでもいいこと?

測定器には、i1 Display Proを用いました。安価かつ性能が良いキャリブレータです。
ソフトは、i1 Profiler / HCFR の併用です。
HTC J butterflyの記事では、ソフトの違いを出さないためにi1 Profilerのみを使用しましたが、本体の熱による輝度低下のため、HCFRも使用しました。

測定中のお供として本を読んでいたので、記載してありますw
測定中は基本暇ですし、熱取る時間も暇ですから。

ニャル子は1巻と半分、フルメタル・パニック!アナザーは最新刊の6巻を全部読みましたね。
いい暇つぶしになりました。

おわりに

HTC J butterflyの測定経験から、順調に測定することができました。経験が活きましたね。

結果ですが、正直言うと、あまり性能はよくありません。
これが、ソニーが販売した機種なのかという…

今後、液晶に力を入れていくのか、疑問ではありますが、できるだけ良い液晶を使った方が良いと思うんですけどね。

4 件のコメント :

  1. 超今更なんですがCrystal LED Displayについての記事などは書かれないのでしょうか?
    出回っている情報が少ないと言うこともありますが...

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    返信
    1. 今のところ書く予定は無いですが、検討はして置きます。
      CLDは情報が少ないということもありますが、書く事がそれほど無いというのもあります。
      基本的にはLEDの話に終始するでしょうし。

      削除
  2. タッチパネルで反射して見えているのは金属ではなく、ブリッジ(ITO)とInsulator(透明レジスト)です。
    ブリッジでの反射光とInsulatorでの反射光が重なって増幅されていると思われます。


    ブリッジ周辺断面図

    カバーガラス
    ブリッジ(ITO)
    Insulator(透明レジスト、ブリッジ周辺のみ)
    ITO電極
    TOC(透明レジスト、全面塗布)

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    返信
    1. ITOとレジストであんなにも反射するものなんですか。
      反射しているので「金属だ」と何となく思っていたのですが…勉強になりました。
      ですが、金属なのかITO+レジストによるものなのか分からないので、別館(この記事)と本館記事では併記させてもらいます。

      ご指摘ありがとうございます。

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