3DS LLを購入した。
で、あることに気が付いた。
追記;再び情報を元に考察を行ないました。「3DSと3DS LLの液晶パネルを考察」
購入
3DS LLを購入した。
3DSのゲームがやりたいがためではなく、DS Liteの画面が小さく感じるようになったため。HTL21のおかげ。
簡単な動作確認して、問題なかったから保護フィルムを貼って、ようやく画面を注視してそこであることに気が付いた。
あること?
DS Liteの液晶パネルは典型的なTNモードの表示特性で、お世辞にも品質は良くなかった。
特定の一方向から見るとひどい階調反転が起こる。
3DS LLも「TNだろうなー」と思って見ると、視野角を取ったときの色の変化は大きいけど、階調の反転はほぼ起きてないし、結構輝度がある。
この時点で「あれ?」となった。そして、次に上下を見て「あれ?」がほぼ確信に変わった。
これTNじゃない。
視野角
上下左右ほとんど同じ。輝度はあるが、色が抜けて、白くなる。
そして、上下/左右の間の視野からの角度での色抜けも上下/左右の基本方位とほとんど同じ。
TNだとこうなることはほとんど無い。TNだと上下のどちらかでひどい階調反転が起こる。
画素設計に最適化された品質の良い位相差板を使用すれば、TNとは思えない程の視野角を実現できるけど、コストアップの原因になる。ただ、こういう処理をすると、色が抜けて白っぽくなるということは少なくなる。
行き着いた結論
3DS LLの液晶パネルは、ほぼ間違いなくS社が製造している。昔からの付き合いだし。
任天堂の3DS LL開発秘話のページには『今回は協力メーカーさんが持っている、大画面液晶テレビ用の特別な工場の設備を使わせてもらうことで、大量生産によるコストダウンが図れたことがいちばん大きいですね。』という記述がある。
この協力メーカーさんのテレビ用というと、S社のK第2工場が思い浮かぶ。
ここは「ヨシイクゾー」が生産されているけど、3DS LLには使ってない、間違いなく。コストダウンするために大基板ガラス使ってるのに、バックプレーンで金を使う訳ない。
この液晶パネルはS社の“あのパネル”である。
“あのパネル”の視野角特性には見覚えがあり、3DS LLとほぼ同じである。
“あのパネル” = ASV
いつもならASVとは・・・と書くけど、面倒だから書かない。
画素写真撮って確認したらいいのだけど、困ったことに保護フィルムが貼ってある。
という訳で、鮮明な写真は撮れない。下画面に至ってはピントすら合わない。なので、上画面(フィルムのおかげでハッキリ撮れなかったけど)の写真を掲載する。
なんかアスペクト比がおかしいように見けるけど、気にしない(変更してないよ)。
独特な画素構造をしているのが分かる。
各ドットの中央に「黒い点」があるのが分かると思う。このことからこの液晶パネルの画素構造は、この点を中心に液晶分子が配向するCPAモードであると推測される。
液晶分子が放射状傾斜配向状態であるため、全周囲に渡って視野角が均一だけど、特定方位の視野角特性を改善したパネルとでは視野角は劣る。
モバイルASVはこのCPAモードである。前にTwitterに掲載したモバイルASVの写真を参考に掲載する。
ほとんど同じであることが分かる。
ASVは、過去にPSPに搭載されたことがある。確認したいけど、今手元にない。
K第2工場で製造なら、TN作るより簡単なのかもしれない。ラビング工程ないし。
確定的に明らか、ではない。
CPAだからと言ってASVであるとは限らない。製造しているのはS社だけでは無いし。
それに視野角的にTNぽくないけど、VAにしてはコントラスト比が低い気もする(モバイル向け+低価格パネルのため、妥当でもある)。
ただ、TNではこのような画素構造を取らない。TNは基板2枚のラビング方向を90度変えて配置する(←↑という感じに)。
このように配置するため、ねじれて配向される。だから、視野角が狭くなる。
画素配列
上記掲載画像を良く見ると通常のRGB縦ストライプではないことが分かる。
横に一直線に同色のドットが並んでいる。こういうのをRGB横ストライプもしくはRGB水平ストライプという。
この配列が使用されているのは、この製品の一番の売りである機能が要因だと思う。
3D
3DSというぐらいだから、3D(立体視)に対応している。
周知の通り、3DSは裸眼(グラスレス)3Dに対応している。
3D方式はパララックスバリア方式。
この方式は一方向の解像度が半分になる。3DSでは水平解像度が半分になる。
パララックスバリア方式はRGB縦ストライプでも可能だけど、精細感が減少する問題がある。
R | G | B | R | G | B | / |
R | g | B | r | G | b | / |
R | r | R | r | R | r |
R | G | B | R | G | B | / |
R | g | B | r | G | b | / |
G | g | G | g | G | g |
R | G | B | R | G | B | / |
R | g | B | r | G | b | / |
B | b | B | b | B | b |
RGB縦ストライプ | / | パララックスバリア方式
(RGB縦ストライプ) |
/ | パララックス
バリア方式 (3DS方式) (RGB横ストライプ) |
RGB縦ストライプのパララックスバリア方式では、RGBが離れすぎているため、精細感がない。
しかし、3DS LLのRGB横ストライプのパララックスバリア方式では、精細感がある。
ただ、RGB縦ストライプのパララックスバリア方式でも精細感を高める方法がある。
ステップ構造と呼ばれるRGBデルタ配列に似た構造をとる事で精細感を高めることができる。
R |
g | B | r | G | b |
r |
G | b | R | g | B |
R |
g | B | r | G | b |
RGB縦ストライプ
(ステップ構造) |
人間の知覚的には、水平方向の解像度の劣化は知覚し易く、垂直方向はし難いため、ステップ構造のRGB縦ストライプを取る方が利には適っている。
しかし、ステップ構造を取る駆動は複雑になるため、コストアップの要因になる。
このため、RGB横ストライプを選択したんだと思う。
他理由に画面サイズが大きくなっていることもあると思う。画素数が同じでありながら画面サイズが大きくなることは、ドットを目で認識しやすくなるため、RGB縦ストライプのように水平方向にドットを並べると、解像度の劣化を感じさせ易くなる。このため、RGB横ストライプを取ることにより、解像度の劣化を感じさせない狙いもあると思う。
パララックスバリア方式
パララックスバリア方式は3D表示時に、水平解像度を半分にすることで裸眼3Dを実現している。
3DSの上画面の画素数は800×240で、3D時には半分になり400×240になる。これは説明したとおり、3Dにするため。
という説明をしたところでもう一度画素写真を掲載する。
初掲載時に「アスペクト比がおかしいように見けるけど」と書いているけど、当然ながら変えてないし、間違ってもいない。
横ストライプのため、縦ストライプのように1画素が横にRGBの組み合わせになるのではなく、縦にRGBの組み合わせとなる。横は同色ドットが並ぶ。このため、通常のようにRGB水平ストライプで画素を探すと画素が縦長であることが分かる。普通は正四角形である。
この辺でピンっと来た人がいるかもしれない。
3D時に水平解像度が半分になるため、この画素は横に1列ではなく2列が割り当てられている。
仕様上では、2D時は横に1列、縦にRGBの組み合わせで1画素として、画素数800×240としているが、実質の画素の割り当ては400×240になっている。
表示させながら確認すると、通常は横に1ドットの割り当てが、横に2ドット割り当てているのが分かる。
このようなサイズにより、1ドットを1画素に割り当てると横のサイズが狂うため、1ドットに2画素を割り当てていると思われる。
蛇足
同じく裸眼3Dに対応したテレビに東芝が発売した「GL1シリーズ」がある。
元東芝モバイルディスプレイ(現ジャパンディスプレイ)が製造したII方式(インテグラルイメージング)の液晶パネルを採用した。
3D時の画素数は1,280×720(20型)、視差数は“9”にもなる。このため、実質持つ画素数は桁外れの数(3,840×2,160=829万4400個)になっている。
画素配列は3DSと同じRGB横ストライプである。先述のとおり、3DSは横に2ドットを割り当てているが、視差数9であるこのパネルは、横に9ドットも割り当てている。ただし、II方式の場合、横も縦も3D表示に使用するため3D表示時の画素数が減少する。
視差数の上昇は3D時の品質(視野角や奥行き間)を向上させる。が、元の画素数を増加させる必要があり、元の画素数の増加はドット開口率の低下を招き、これは3D表示時の精細感を減少させる。
下画面
写真は撮れなかったから掲載しないけど、下画面もRGB横ストライプ。
上画面と違って、横に2ドットではなく、通常の1ドットである。
RGB縦ストライプにしなかったのは、おそらく、上画面との表示質感が異なることを避けるため。
結構、細かいところに気を使っている。
なお、画素構造は上画面と同じくCPAである。
まとめ
色々と発見があって面白かった。
実機見ながら推察して、その後に仕様を見たから、初めから仕様見てたら分かったことなんだけど。
一番の驚きは液晶パネルがCPAであったこと。
ただ、視野角は残念レベルで、VAにしてはコントラスト比は低い。それでも、DS Liteに比べると雲泥の差。個人的には満足。
もう少し詳しく検証したいところでもあるけど、フィルム張ったから、今の所これ以上追求する気はないに等しい。
正直、今更調べてもねーというのもある。
それに精査するなら、本館に書くし。
追記;再び情報を元に考察を行ないました。「3DSと3DS LLの液晶パネルを考察」
どこの会社か、なんて
返信削除http://d.hatena.ne.jp/tenten99/20100404/1270393333
の時点で明らかですよ。
3DSの方の話ですよね。これは3DS LLです。
削除3DSもLLも個人的には99%シャープと思っていますが、断定ができないので“明らかではない”としました。
提示してもらったページでは断定できる根拠にはならないと思います。
無印3DSの話ですが、シャープの人に話を聞いたことがあります。かつてLYNX3Dという裸眼立体視できるシャープのスマホがあったんですが、それと3DSの液晶はほとんど同じものと言っていました。
返信削除パーツ見ると3DSLLもシャープみたいですね。
http://www.dx.com/p/sharp-replacement-bottom-lcd-screen-display-for-nintendo-3ds-xl-3ds-ll-silver-224701#.VWH1T0ZgBtI
http://www.dx.com/p/sharp-replacement-upper-lcd-screen-module-for-nintendo-dsi-xl-ll-154384#.VWH1mkZgBtI
裸眼立体視の方法は数多くある訳ではないので、原理的には同じでしょうね。
削除3DS LLの液晶パネルで使われているメーカーは断定して書きたくないんですよね。
個人的にはシャープと思っているのですけど、「そうだろうと」書いておいても、なぜかそれを「間違いない」と思う人がいるので。